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【生命科学コース】八木教授の総説が、Biophysics and Physicobiology に掲載されました。

 生命科学コースの八木研究室では、細胞の運動装置、鞭毛?繊毛、の構築と機能の研究をしています。精子の尾にある長い毛、ゾウリムシなどの微生物体表にある短い毛としてそれらをご存知の方も多いでしょう。その美しい運動がどうやって生み出されるのか、私たちはそのメカニズムを緑藻?クラミドモナスを使って調べています。この波動運動は、モータータンパク質?ダイニンがそのレールに当たる微小管の上を滑ることで起こります。ダイニンには大きく分けて2種類ありますが(内腕ダイニンと外腕ダイニン、図1参照)、今回の総説では、外腕ダイニンの分子構造を調べた最近の研究成果を紹介しています。

 

【概要】

 鞭毛を輪切りにすると、9本の微小管(8の字型の断面、図1左)が2本の微小管(真円の断面、図1左の中央)を取り囲む「9+2」と呼ばれる構造が観察できます。周辺にある微小管には、ダイニン内腕と外腕の2つの突起があり、外腕のダイニン分子は、17 種類もの部品タンパク質からなります。このうち、α鎖, β鎖, γ鎖という3つの巨大タンパク質が微小管を滑らせる活性をもっています。それ以外の多くは分子の根元に結合していますが、中には全く別の所に結合している変わった部品もあります。軽鎖LC1は、γ鎖の頭部先端に結合することがわかっていましたが(図1右下)、私たちはこれまでに、その結合の様子を原子レベルで明らかにしています(図1右上)。一方、ごく最近、ダイニン外腕分子と微小管が結合した構造も原子レベルで明らかになりました。そこでこの総説では、両者の構造を比較しLC1の機能について考察しました。ダイニン分子の多くは微小管と1か所で結合しますが、ダイニンの中には、近接する2カ所で微小管と結合するものもいます。その場合、ダイニン分子の通常の微小管結合部以外に、その近傍から飛び出す「フラップ」と呼ばれる突起でも微小管と結合します(図2下)。不思議なことに、LC1はこのフラップをマスクするように結合し(図2中)、それを折れたたんでいるように見えます(図2上、中)。繊毛の運動は多数のダイニン分子(繊毛内に1万個以上)を巧妙にオンオフして生じると考えられています。LC1はフラップを巧みに操っていて、その結果として、繊毛の目覚ましい波動運動が生じている可能性が示されました。

 本研究の一部は,JSPS科研費JP19H02566, JP21K0125, JP22H01922の助成を受け,実施されたものです。

 論文の詳細についてはこちらをご覧ください。

 また、八木研究室の詳細はこちらをご覧ください。

図1 繊毛とダイニンの構造

図1 繊毛と微小管モータータンパク質?ダイニンの構造

(右上)繊毛運動研究のモデル生物?クラミドモナス、(左下)繊毛の輪切り構造、(右下)繊毛の微小管に結合している外腕ダイニン分子の部品構造、(右上)外腕ダイニンγ鎖に結合する軽鎖 LC1 の構造

 

図2 ダイニンと軽鎖LC1の結合

図2 外腕ダイニンγ鎖と軽鎖LC1の結合

(左上)ダイニンγ鎖の微小管結合部位に結合する軽鎖LC1、(右上)γ鎖とLC1が微小管に結合する様子、(右中)γ鎖のフラップ構造(図1右上の図を画面の平面上を90°左回転し、LC1を取り除いた)、(右下)内腕ダイニンcの微小管結合部(上のγ鎖と同等領域)におけるフラップの構造

 

SDGs3

 

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