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【生命科学コース】教員ロングインタビュー2?齋藤教授

印刷用ページを表示する 2023年5月30日更新

 生命科学コースでは、大学Web上で講義、学生のさまざまな活動や卒業生の声を連載形式で紹介しています。本年度は、昨年の新任教員インタビュー(金岡教授)に続き、教員の研究活動やこれまでの歩みについてインタビュー形式の連載としてお届けすることにしました。初回の福永教授に続く第2弾として、細胞機能制御学研究室の齋藤教授を紹介します。 

ラボイメージ

齋藤 靖和 教授(細胞機能制御学研究室)

齋藤教授

細胞機能制御学研究室 (3号館6F、3601室)

担当講義科目:生物学Ⅱ、栄養化学、細胞?生体機能学、細胞機能制御学(大学院)など

Q ご専門や研究内容について教えてください。

皆さんは「生命ってなんだろう?」って考えたことはありませんか?

 もしそういった経験がなければ、最も身近な生命である「自分」という体の中、目では見えないレベルでどのようなことが起こっているのか考えてみたり、想像してみたことはありませんか?例えば、自分自身の誕生、子供から大人への成長、日焼けをしたり、病気になったり、いったい何が自分の体の中で起こっているのか不思議に思うことはありませんか?私はこういったヒトの体のしくみをもっと知りたいと思っています。学生の頃からの興味ですが、この気持ちが今の私の根っこになっています。

 私の専門は「細胞生物学」、「薬理学」、それを組み合わせた「細胞機能制御学」になるのかなと思います。特に「老化」、「がん」、「皮膚機能」について、人の手で制御(コントロール)できないだろうか?という視点で研究を行っています。研究テーマは何ですか?と聞かれると「細胞老化制御法の探索、副作用の少ない抗がん手法の探索、皮膚防護作用のある素材の探索、新規バイオ素材の機能開拓」となります。もう少し分かりやすく噛み砕いて、「人体の健康にとって有用な物質や方法を見つけ、そのメカニズムを解き明かす研究」とでも言えば伝わりやすいでしょうか。主にヒト由来の培養細胞を使って研究しています。

 詳しい内容は、大学HPの研究者紹介に書いていますのでそちらも参考にして下さい。

細胞たち

研究室で使用している細胞たち(一例)左からヒト線維芽細胞、ヒトがん細胞、メラニン産生細胞

ヒト皮膚細胞が紫外線を照射を受けた後、時間経過に伴って細胞が傷害を受け、死滅していく様子です

(補足:細胞は赤色で蛍光染色されています。濃赤色の丸い部分が核です。)

Q 先生は本学のご出身なんですね。

 そうなんです。本学の前身である広島県立大学 生物資源学部 生命開発学科の出身です(広島県立大学は2005年(平成17年)に県内3公立大学が統合して県立広島大学となりました)。広島県立大学が現在の庄原キャンパスとなっていますので、庄原キャンパスの学生の皆さんは全員後輩ということになるのかなと思っています。学生からは時々、「学生の頃はどこのアパートに住んでいたんですか?」なんて聞かれることもあります。学生寮にも2年間住んでいたんですよ(当時、寮にはエアコンがありませんでした(T-T)​​​。こんな他の先生にはないバックグラウンドを持っているので、参考になるかどうか分かりませんが、学生時代のことや今に至るまでのことを振り返りながらお話していきたいと思います。

 私は高校の時にバイオテクノロジーに興味を持ち、漠然と理学系か農学系の学部に進学しようと思っていました。そして、センター試験(今の共通テスト)の結果を踏まえて広島県立大学 生物資源学部に進学しました。私自身は岡山県出身ですが、両祖母は広島県出身で父も広島県内の会社に勤めていたということもあって、小さなころから良く行き来していた広島県に親近感があったのも理由かもしれません。私が入学した当時はまだ設立4年目の新しい大学で就職実績もまだなかったということもあり、高校の先生から心配されたことを覚えていますが、最後は自分の直感を信じて受験、進学しました。

Q どのような大学時代を過ごされたんですか。

 不真面目ではなかったと思いますが、優秀な人も多く、また私自身、今でいう“陽キャ”でもなかったので、あまりパッとせず目立たない学生だったのではないかと思います。試験前には出来が良く、頼りになる友人からノートを借りたり、教えてもらったりする、そんな学生でした。庄原市内も当時、大きなスーパーといえばジョイフル(今もあるショッピングセンター)だけで、24時間営業の大手コンビニチェーンなどは無く、スマホもインターネットも無かった時代でしたので、今よりも田舎感は強かったかもしれませんね。学生生活については友人と食事したり、漫画やゲームに没頭したり、友人の家に泊まりに行ったり、車を持っている友人と出かけたりなどが多かったように思います。このあたりは今の学生もあまり変わらないですかね。庄原はスキー場が近いので、大学3年生で車を持ってからは一時期スキーにハマっていました(体育の授業でスキーがありました)。当時はロングナイターといって、夜中0時まで滑走できるスキー場があったので、研究室で夕方17時ごろまで実験した後、スキー場へ行き、延々と夜中まで滑っていました。下手の横好きでしたが、まぁ今から思うと良くそんな体力があったなと思います(笑)。学生の皆さんも折角の自然環境に恵まれた立地なので、夏はキャンプや川遊び、冬はウインタースポーツなどにも挑戦してみては?と思います。

キャンプ

研究室メンバーとキャンプ場での一コマ(写真は一部加工しています)​

Q いまの道につながるきっかけは何だったんですか。

 黒歴史の部分はちょっと書けませんので(苦笑)、無難そうな話を中心に書きますが、大学1、2年生の頃は「将来どうしようかな???」という思いを漠然と持ちながら日々過ごしていたように思います。要は、目的が定まらず意識の低い状態ではなかったかと思います。そんな私でしたが、研究室配属が大学生活におけるターニングポイントとなりました。当時から3年生からの配属だったのですが、その時に改めて将来について考えてみることにしました。その結果、

〇自分の体にも関わりうること(ヒトの病気や健康に関わること)を知りたい
〇自分の体(他の人にも)に役に立つことを知りたい、研究したい
〇できれば研究職に就きたい

という考えに至り、自分の興味や将来像を考えて研究室を選択しました。運よく希望する研究室に配属され、そこで当時まだ分かっていなかった「ビタミンCはどのようにして細胞の中へ入り、そして高濃度に蓄積されるのか」ということを明らかにする研究に取り組みました。研究室での「調べて、考えて、計画して、実験して、その結果に一喜一憂しながらまた進む」という“研究という探求活動”が私にはとても新鮮で、また、先生や先輩、同級生、後輩達と一緒に結果を考察したり、議論しあったりしたことが自分に大きな刺激と影響を与えてくれました。"研究は大変だけど面白い”ということを実感し、「研究を仕事にできたらいいな」という思いが強くなりました。当時から研究職を考えるなら大学院は最低条件といわれていたこと、手がけていた研究テーマをより深めたいという理由で、そのまま大学院へと進学しました。そこでビタミンCのトランスポーター(細胞膜表面に存在するビタミンC輸送タンパク質)を探すことになったのですが、残念ながらタンパク質の発見には至らず卒業となりました???(後にアメリカの研究チームによって発見されました)。​

SVCT

ビタミンCのトランスポーター​(SVCT2)の蛍光免疫染色写真(緑色に光っているのがSVCT2)​

ラボ

大学研究室の頃(左:実験室、中:院生室、右:3号館6Fの階段踊り場です。
階段踊り場付近は、学生たちのたまり場になっていて、他研究室の学生ともいろんな話をしていました。)
(写真は一部加工しています)​

 当時の先輩、同級生、後輩の中には私と同じように大学教員になっていたり、国や企業の研究機関で働いておられる方もいます。最近の本学卒業生の中にも同様な就職先を選んで活躍している人もいますので、興味のある人は以下生命科学コースHPの「卒業生の声」をご覧下さい。

【生命環境学科生命科学コース】受験生必見ー卒業生の声 まとめ?その1

【生命環境学科生命科学コース】卒業生の声-まとめ2

 

Q 企業ではどのようなことをされていたんですか。

 就職超氷河期世代ということもあって、就職活動は難航、挫折もたくさん味わいましたが、最終的には縁あって眼科系企業に就職が決まり、研究所で主に角膜に関する研究に7年ほど取り組みました。角膜は血管もなく透明であるというユニークな組織ですが、一部は皮膚に似ているところもあって、今の研究にも通じるところがあります。詳しくは書けませんが、会社では細胞や動物を使った薬理、薬物動態、安全性、分析に関する試験や大学との共同研究など、幅広く携わらせてもらいました。研究所で研究員として生き残る大変さもひしひしと感じつつ、多くの良き上司、同僚、後輩に恵まれ、たくさん鍛えて頂きました。生物、化学、薬学、獣医学など多分野の高い専門性を持った人々のなかで一緒に仕事ができたことは、今から振り返るととてもありがたかったですね。また、製造や品質保証、営業、開発、知財などの部署とも関わることがあったので、研究という特定の専門領域からだけでなく、製造や管理、営業、薬事、特許といった製品の開発、社会への実装といったより大きな視点から物事を考えたり、見れるようになったのはこの頃の経験が大きいかなと思っています。この社会人研究生活で得た知識や経験は今の研究や学生教育において役立っていると感じます。

 余談にはなりますが、会社にはいろんなクラブ活動があって、バドミントン、ソフトボール、バレーボール、陶芸などいろいろとやっていました。あと、ゴルフやスキーもやってましたね。相変わらず下手の横好きでしたが???。バラエティに富んだ様々な人達との交流もあり、いい思い出です。

会社

企業で働いていた頃(左:研究所、右:ソフトボール大会、背番号8が齋藤)

Q 企業から大学に戻られたんですね。

 縁あって、大学に戻ってくることになりました。大学時代お世話になったり、講義を受けていた先生方と教員という立場で関わることとなり、最初は戸惑うこともありましたが、何かと気にして下さったり、声をかけて頂いたりと、一人前の大学教員になれるよう多くの先生方から育てて頂いています。

 研究面では大学教員の場合、企業とは異なり、自分で研究したい事にわりと自由に取り組むことができるのが大きな魅力です。私の場合は興味が学生のころから変わることなく、

〇自分の体にも関わりうること(ヒトの病気や健康に関わること)を知りたい
〇自分の体(他の人にも)に役に立つことを知りたい、研究したい

の2つだったので、自分のやりたいことをやってみようと今の研究テーマへとつながってます。ビタミンCに関する研究は今も続けています。

 広島に戻ってから17年が経ち、もうすっかり広島県民になりました。お好み焼を焼く腕前も上がりましたし、カープやサンフレッチェ、ドラゴンフライズ、JTサンダースなどの試合結果をチェックし、一喜一憂する日々を送っています。年に数回、スタジアムに足を運んでいたのですが、美高梅国际娱乐_2024欧洲杯下注-官网*直播ですっかり足が遠のいてしまいました。また行きたいですね。

ユニ

Q 研究において成し遂げたい事、考えていることなどはありますか。

 もちろん研究を進める中で、新しいことを発見し、いずれはそれが人々の役に立てたら良いなと思いながら、小さな一歩でもいいからと前を目指して研究を進めています。月並みかもしれませんが、「老化」、「がん」、「皮膚」に関することで困っている人々を少しでも助けることができるような発見や成果をあげたいなと思っています。最近は、研究成果だけでなく、研究活動を通じて学生をいかに成長させることができるのか、が大きなテーマ?ミッションにもなっています。やさしく接するのが良いのか、厳しくが良いのか、やる気スイッチはどこにあるのか、学生ひとりひとりの性格や適性を考えながらアプローチを試みるのですが、これがなかなか難しいですね。幸いなことに卒業研究の2年間や大学院進学を経て、大きく成長した学生をこれまでたくさん見てきましたので、何とかなっていると思うのですが、このあたりはまだまだ修行が必要だと感じています。そのためにも日ごろから学生達ともっといろんな話をしたいのですが、仕事が多くてなかなか時間が作れないのが最近の悩みです???。

齋藤研卒業生

研究室のメンバーと(卒業式、2023.3)

Q 高校生や在学生、卒業生へメッセージをお願いします。

 この記事を読んで下さり有難うございます(長く書きすぎたと反省しています???)
私の経験をお伝えすることで、今、キャンパスで学んでいる在学生、社会に巣立っていった卒業生、そして進学先を考えている高校生の皆さん、そんな誰かの参考やモチベーションとなるのであれば嬉しいです。

 

〇高校生の皆さんへ

 まだ具体的な学部学科が決まっていない人は、まず「自分は何に興味があるのか」考えてみるところから始めてみて下さい。高校生の頃は、まだ1つに絞れない人も多いかと思います。多少大雑把でもいいので、もし、「生物や生命科学に興味がある、何だか面白そう」ということでしたら、本学(生命科学コース)を候補の一つとして考えてもらえると嬉しいですね。ぜひ一度、コースのHPを見たり、オープンキャンパスなどにも参加してみて、私たち生命科学コースについてもっと知ってもらいたいなと思います。

生命科学コースにおける研究内容について

 

〇在学生の皆さんへ

 私自身、研究室選びがターニングポイントだったという経験から、自分の興味を知り、情報をいろいろ集めながら研究室を考えてみて下さい。研究室選びについては授業でも私の経験談など少しお話する機会もあります。時々ですが「先生の研究室に入りたくてこの大学に来ました。」と言ってくれる学生がいるのは素直に嬉しいですね。私の研究内容に興味を持ち、頑張ってみようと思ってくれる方、一緒に研究しましょう。ただ、研究室配属は人数の関係で思い通りにならないこともあります。例えそうなってしまったとしても、配属後はまずそこで一生懸命頑張ってみて下さい。本気にならないと得られない経験や気づきがあります。

 

〇卒業生の皆さんへ

 昨年度、卒業生からの声(のべ40名以上)をコースHP(2の活躍する卒業生たち)​にまとめて掲載させて頂きました。協力して下さった皆さんありがとうございました。本学で生命科学を学び、巣立っていったみなさんのリアルな姿はこれから入学を考える高校生、進路を考える在学生、卒業生たちにとって良い刺激になったのではないかと思います。卒業生からの声は引き続き募集しておりますので、また皆さんの様子を教えて頂ければ嬉しいです。

 

さいごに

 庄原キャンパスは自然が豊かで、落ち着いたのどかな雰囲気の街です。中山間地域ゆえの不便さはありますが、こういった都会とは一味違う環境に一度身を置いてみることは、案外悪いことでもなく、自身の価値観を大きく広げてくれたり、他の人とは違う独自の強みや新たな気づきをみなさんに与えてくれるのではないでしょうか。

 

「みなさんが本気になれる出会いや場所、それが今の生命科学コースにはたくさんあると私は思っています!」

 

研究室