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【生命科学コース】 生命システム科学専攻 博士課程後期2年 藤内慎梧君(山下研究室)と山下准教授の論文がJournal of Reproduction and Development誌に掲載されました

印刷用ページを表示する 2020年10月14日更新

Shingo Tonai, Akane Kawabata, Tomoya Nakanishi, Joo Yeon Lee, Asako Okamoto, Masayuki Shimada, Yasuhisa Yamashita

Iron deficiency induces female infertile in order to failure of follicular development in mice.

Journal of Reproduction and Development, 2020, doi: 10.1262/jrd.2020-074

【解説】​ 

 鉄は我々の体に必須の微量元素であり,体内においてエネルギー産生,細胞増殖などを担う分子であることが知られています。近年,鉄不足と不妊症との関係が指摘されていますが,科学的に証明されていません。

 本研究では,3週齢で離乳後のマウスに通常の鉄を含んだ飼料で3週間飼育した雌のマウス(Normal Diet; ND)と鉄分をほとんど含んでいない低鉄飼料(0.001%以下)で3週間飼育した雌のマウス(Low Fe Diet; LFD)を用いて,雌の生殖機能にどのような影響が出るのかを比較解析しました。

 その結果,NDマウスでは,性周期が約4日間隔で規則的であるのに対して,LFDマウスでは,性周期が発情休止期で停止し(図1),このマウスは妊孕性が全くないことが明らかになりました。さらにLFDマウスは,卵胞発育に必須のホルモンであるFSHに対する受容体の発現が著しく低下し,卵胞発育不全を呈することが明らかになりました。

 臨床現場では,卵胞発育不全患者への治療の一つとして,通常FSH製剤を投与します。そこで,LFDマウスにFSH製剤(PMSG)を投与する実験を行いましたが,全く卵胞発育が誘導されず,妊孕性は低いままでした(図2)。

 次の実験では,鉄の補給により失われた卵巣機能が回復するのかを検証するために,鉄を含む通常飼料でLFDマウスに3週間給餌したマウス(LF Diet Rescue; LFDR)を作成し解析しました。その結果,LFDRマウスはNDマウスと同様に性周期が回復することを明らかにしました。

 本研究は,全身性の鉄不足により卵胞発育不全により不妊となる鉄欠乏性不妊症が存在することを初めて示したものです。さらに,この鉄欠乏性不妊症の治療には,通常用いられるFSH製剤の投与は効果がなく,鉄剤の補給が有効であることを示しています。このため,鉄欠乏を原因とする不妊症患者への治療法確立が期待できる研究成果です。

 本研究は,山下研究室で卒論?修論を書いた川端茜さんの研究を藤内君が引き継ぎ論文を書いた研究成果です。また,山下研究室で博士号を取得し(日本学術振興会特別研究員),倉敷芸術科学大学で助教の岡本麻子 博士,および広島大学大学院統合生命科学研究科 教授 島田昌之 博士との共同研究により得られた成果です。なお,本研究はJSPS科研費19K06359の助成を受けて得られた研究成果です。

妊孕性:妊娠する能力
卵胞:卵子を含んだ球状の細胞の集合であり,卵胞発育を経て排卵によりそこから卵子が放出される。
FSH:Follicle stimulating hormone(卵胞刺激ホルモン)。下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞で合成?分泌されるホルモン。卵巣内で未成熟の卵胞の発育を促し,卵成熟を促進させる。

マウス膣スメア
卵巣切片像