防災社会システム?デザインプロジェクト研究センター

防災マーケティングの目指すもの
それはSustainableな社会システムを構築すること

Profile

専攻長

江戸 克栄

経営管理研究科

東京生まれ。文化学園大学教授などを経て、2016年より県立広島大学へ着任し、HBMS専攻長に。2018年より、マーケティングの手法を応用して実践的な防災システム開発に力を注ぐ。専門分野は、マーケティング、マーケティングリサーチ、消費者行動。

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防災マーケティングとはどのようなものですか。

防災?減災分野においては、民間企業が、ダムとか防災グッズなどのハードな側面や、また、CSRや社会貢献のような意味合いを除いて積極的に取り組んでいくことが少なく、第三次産業、サービスの面で活躍する場がないのが現状ですね。それは、「防災や減災などの社会的、公共性が高い領域で市場形成やビジネスモデルを構築するなんて、とんでもない」という意識があったのかもしれません。でも、ボランティアに頼るだけでは長続きしません。そこでボランティアというベースではなくてあくまでビジネスモデルとして最低限の採算が取れるモデルが必要と考えたわけです。民間企業が防災?減災分野に参画することは、「自助」「共助」では、なかなか導入することができない最先端技術、「公助」としてこれ以上公的資金を注入できない財政状況に代わる資金調達を果たすことができるメリットがあります。マーケティングの主体者である企業等の防災分野への参画を促進させるシステムをデザインすることが必要なのです。

今後の展望を教えてください。

調査を進めていくうちに、なぜ、避難行動に結びつかなかったのか、その理由として、高齢者は身体的な制限等から歩いての移動が難しい、車の運転もできないといったことから、避難を躊躇することや避難所での快適性の問題から避難することに抵抗感があることもわかりました。そこで、タクシーを利用しやすい状況、快適な避難場所(例えばホテル等)があれば、避難が促進されるのではないかと考えました。タクシー代やホテル代のような「避難するコスト」の発生を何らかの形でリスクヘッジできれば躊躇なく積極的避難ができるかもしれない。だから、避難準備又は避難勧告が発令された際、避難促進の仕組み(避難準備時送迎等)をつくり、そこで発生したコストを「保険」で支払うような新しい避難保険商品の開発を進めていきたいです。そして、地域の皆さんが安心?安全に暮らせるような新しい防災社会システムを構築することが目標です。